養老保険を使った退職金準備

保険を使った安定的な手法の一つ

養老保険養老保険は、満期保険金と死亡保険金を同額に設定した保険です。満期保険金が段々積みあがっていきますので、貯蓄性もあります。多くの医療法人ではドクターは理事長のみとなっており、ドクターに何かあると、経営が非常に不安定になります。これに、金銭だけでも備えておける保険は、それなりの価値があるでしょう。養老保険は、いわゆるハーフタックスプランとして税務上安定した取扱いがなされているため、法人化後に検討するケースが多くなっています。ハーフタックスというのはつまり、支払保険料の半分を税務上の損金に、もう半分を積立処理する方法のことを指します。例えば、死亡保険金1200万円、満期保険金1200万円、1か月あたり10万円の保険料を10年間支払う保険に入ったとします。毎月の経理処理は、
 福利厚生費 50000円/ 現金 50000円
 保険積立金 50000円/ 現金 50000円
となり、支払った保険料10万円のうち、半分は福利厚生費として損金処理、もう半分は保険積立金として資産計上することになります。年間にしますと、これが×12となり、支払保険料総額120万円のうち、60万円が損金となり、60万円は保険積立金として貸借対照表に資産計上されます。

  養老保険の仕組み図

このように満期まで支払を続けて、満期保険金を受け取った場合、受け取り保険金は1200万円となりますが、保険積立金が600万円ありますので、差額の600万円が収益として認識されます。
 1200-600=600 
ここで、例えば満期保険金を算入する前の段階だと300万円の所得が出ていたとすると、このままだとこの差額の600万円に課税されます。そこで、この期にもし退職金を1000万支払うとすると、この法人の所得は最終的にマイナス100万円となり、法人としては満期保険金と保険積立金の差額600万円部分に課税されることは無くなります。
 600+300-1000=-100 
すると結果的には、退職金相当額については、毎年約半分ずつ損金にしながら積み立てることができたということになります。退職金を支払った期だけの損金になるのではなく、前倒しで損金にできたことで、退職金をもらう人が経営している間に、退職金を損金にすることができたということになります。法人の利益がだんだん下がっていった場合には、利益が多い時期に損金経理できたというメリットも生ずることもあります。多くの医療法人では、年間所得800万円で法人税の税率が変わります。保険料を掛けている期間の大半が所得800万円超で、退職金支給時期近辺では所得400万を切っているようであれば、税率の高いときに保険料を損金にできているため、その効果は大きいと言えるでしょう。一方、保険を掛ける前から所得400万円を切っている状態であれば、節税効果はかなり微妙な感じです。また、現実の医療法人については、出資持分のある法人であるかどうか、身内で法人を引き継いでくれる人がいるのかどうかでも、キャッシュ移動の必要性は変わってきますので、着地点をどうするのか、はっきりさせてシミュレーションしていくことが必要です。保険を使った備えの場合は、セッティングだけでなく、満期後あるいは解約後の処理、すなわち出口のこともしっかりと考慮に入れておく必要があります。

小川理税理士事務所

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